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7話
ライターの揺れている炎の明かりだけを頼りに、演劇が行われるホールに向かって歩いていく。吹き抜けのロビーに、足音が反響して大きく聞こえてくるのが不気味だった。
むつも颯介も祐斗も、暗闇にもこうした不気味な雰囲気にも慣れているはずだったが、どこか落ち着きがないようだった。山上が危ないという焦りと、どこからまた人形が出てくるかも分からないという不安があるのだろう。
歩調も気付かないうちに早足になっていた。
大きな両開きの扉が見えてくると、冬四郎とむつは歩調を緩めた。物音もしないし、人形が飛び出してくる事もない。
むつは、そっと扉に近寄り手を伸ばしたが、ぱちっと静電気のような物が走り手を引っ込めた。冬四郎が開けようと手を伸ばしても、同じようにすぐに手を引っ込めた。
「関係者以外立入禁止か」
「結界、ですか?」
祐斗が、不安そうに言うとむつは頷いた。




