7話
むつはそう言うと、源太の方を見た。源太は、少しだけ視線を泳がせた。何かを知っているようだった。だが、むつは問いただす事はせずに、じーっと源太を見ていた。
「分かった、話すよ。乗り移りを今夜するんだ。山上は病院から抜け出したんじゃなくて、たぶん連れ出されたんだよ…だから、すでに乗り移ってる人形たちは舞台の方に居るんじゃないかな?言ってみたら、祝い事だからな」
「成る程。なら、さっさと乗り込むしかないのかしらね」
むつは立ち上がり、床に置いてあったライターを拾い上げた。
「あの人…」
ライターのゆらゆらと揺れる炎を見つめながら、むつは何かを言いかけたが結局は少し首を傾げるだけで何も言わなかった。
冬四郎がむつの手からライターを取ると、先に立って歩き出すとむつは冬四郎に並ぶように歩き出した。
「あの人、どうかしたか?」
むつはちらっと後ろを見て、冬四郎との距離を縮めると小声で話し出した。
「源太の事が好きなんだろーなーって思ったの…足止め目的なら出てくる必要ないし、ずっと源太を見てたから」
「あいつも襲われてなかったか?」
「それは、こっち側に協力してたからじゃないかな?ムカついた…というより、悲しかったのかもね。ま、ほとんど勘よ」
「女の事は女にしか分からない、かもな」




