7話
「とし君って、また懐かしい呼び方してくれるよな…大声で呼ばれると恥ずかしいな」
「…無事そうで何より」
むつに支えられていた西原だったが、自分の足でしっかりと立つと周囲に広がっている炎を見て、苦笑いを浮かべた。
「焦ってしくった」
不貞腐れたように言い、むつはきゅっと西原を上目使いに睨んだ。
「…悪かった。どうする?」
「抜ける。そうじゃないと、源太も危ないけど向こうに人形が向かってるから」
「どうやって?」
「こうやって…」
むつは西原の手を取ると、炎に向かっていく。西原は驚いたような顔をしていたが、むつの手を握り返すと炎の中に入っていく。顔に熱風があたり、熱さに目を閉じたが身体に燃え移るような事はなかった。
「火災報知器、切れてるっぽいね」
「みたいだな」
むつと西原は抜けてきた炎を見て、鳴らない火災報知器のあるはずの天井の方に目を向けた。炎はまだ勢いがおさまっておらず、天井にも届いている。
「これ、消えるのか?」
「焼く対象がなくなれば、ね。たぶん」
「たぶんか」
西原は心配そうに炎を見て、それから源太の方に視界を向けた。源太が持っているはずのペンライトが、あっちこっちに向けられている。
「助けるか?」
「まぁ…仕方ないね」
2人は少し炎を気掛かりそうに見たが、すぐに源太の方に向かって走り出した。




