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7話
むつは女性の方を向いたまま、ゆっくりと後退した。颯介と祐斗の背中にぶつかった。
「足、折っちゃうか糸を切れば動けなくなるはずだから…普通の人形ならね」
「どう見ても普通じゃないっすよ?」
「むっちゃんの方のは、足なくても近付いて来てるみたいだしね」
「そっち任せる」
「なら、俺はこっちかな?」
西原がむつの隣に立って、着物の裾を引きずりながら近付いてくる人形を見ている。
「源太、真ん中に立って、ペンライトをこっちに向けといて。視界の確保が必要」
むつは源太にペンライトを持たせて、女性の居る方を照らさせた。颯介と祐斗も源太にペンライトを預けた。
「動かないでくださいよ」
颯介がぽんぽんっと源太の背中を叩いた。
むつは早くも布を取って、日本刀の柄に手を添えていた。じりじりと近付いてくる人形を壊す気満々のようだ。
しゅっしゅっと裾をさばいていた人形たちが、ぴたっと止まると飛ぶような勢いでむつと西原に向かってきた。




