2話
話をしながら、むつはそっと靴を脱いだ。そして、姿勢を低くしドアの前まで行った。器用な事に、ドアに近付くにつれ、声を少しずつ小さくしていく。その器用さと、気配のなさには西原も驚いていた。
西原も靴を脱いで素早く近付いた。そして、静かにドアノブに手をかけて音を経てないようにゆっくり、ゆっくり回した。そして、西原とむつは顔を見合わせて頷いた。
西原が勢いよくドアを開け、むつが飛び出した。それと同時に非常階段のドアが閉まり、かんかんかんっと足音が響いていた。
「くっそ‼」
靴もはかずに2人は、非常階段に向かうとドアを開け、階段を駆け下りて行った。
足音はもうだいぶ小さい。むつは途中で諦めようとしたが、西原は飛び降りるように走っていく。
西原は1階まで駆け下り道路に出ると、辺りを見回した。だが、走り去る人の後ろ姿さえ見付けられなかった。
後から追い付いたむつは、肩をすくめた。
「お前、何で諦めたんだよ」
「だーって、かなり足早いから。もう戻ろうよ、足の裏黒くなっちゃう」
「けど…誰か居たな。それも盗み聞きしてたって事か?逃げたんだから」
「そういう事だと思う…でも何で?」




