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7話
颯介と冬四郎はきちんと駐車場に車を停めた。車を降りると、源太が冬四郎の姿を取りむつの所に駆け寄ってきた。
爽やかな笑顔を振り撒いて駆け寄ってくる冬四郎を見て、むつは少しだけ嫌そうな顔をした。
「何で、その顔なの?」
「人形のまま歩くなって言われたし?それに、これが格好いい男なんだろ?」
「いや…どうかな?」
むつは首を傾げて笑った。
「それより、劇場も人形ばっかりって言ってたね?どういう事?まぁ確かに、人形いっぱいあったね」
「それは、人形浄瑠璃を主にやる場所だからな。けど、そうじゃない。劇場スタッフはみんな人形と入れ替わっちまってるんだよ」
「やっぱそうなんだ。だから、防犯カメラの一部が途切れてたのね」
「仕事が終わったらみんな劇場内に戻って休むからな。それが映ってると問題ありだからな…で、どうやって入る?」
劇場が近くに見えてくると、源太は面白そうにむつの顔を覗きこんだ。むつは、それを鬱陶しいように手で軽く払い除けた。




