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7話
祐斗からはむつの顔は見えなかったが、声の調子からして何か迷っている様子が伺えた。
「むっちゃんは、他にも何か気がかりがあるみたいだね?」
「ん?…うん。社長がさ、昔の恋人の為なんかに身体張るかなーっていう疑問。それに、こんな仕事してて簡単に条件飲んで契約するかなぁ?」
「むつさん、人の事言えないっすよ?」
助手席から身を乗り出すようにして、むつは祐斗の頭を叩こうとしたが、祐斗に軽々と逃げられた。
「まぁまぁ…けど、そうだね。沼井夫人は何を欲しかったんだろうね」
むつも祐斗もそれには答えられなかった。まったく想像もつかないからだ。
「むっちゃんは、どう?西原さん犠牲にして何か手に入れたいとかある?」
「それじゃ代償が大きすぎるかな…ボールペンと交換でメロン貰えるならするけど」
「等価交換じゃなさすぎるでしょ」




