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7話
あっという間に、むつと同じ背丈にむつの顔をした式神が出来上がった。むつは、それを抜いた日本刀ですぱっと縦に切った。切られた式神はすぐに小さな紙に戻ると床に落ちた。
何をしたいのかと、颯介と祐斗が見ている。冬四郎と西原と源太も興味深そうにむつが何をしようとしているのか見ていた。
日本刀を右手だけで持ち、一度振るうと左手を出してそこに刃をあてがった。そして、勢いよく引いた。
「むつさんっ‼」
祐斗が慌ててむつから日本刀を取り上げた。颯介もすぐに駆け寄ると、むつの左手をとった。
「あれ?」
だが、むつの左手には切り傷も何もない。
「人は切れないの。だから…持っていく。人に向けても模造刀と変わらないからね」
むつは祐斗の手から日本刀を取ると、ぱちんっと鍔を鳴らして鞘におさめた。
「沼井夫人は…切れるかな?」
布を巻きながら、むつがそう呟いたが誰も返事はしなかった。




