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7話
冬四郎は、ふふっと思わずといったように笑った。むつが、いぶかしむように見ると冬四郎は、笑いながらむつの頭を撫でていた。
「あの人…本当ばっかだよな」
「本当にね。嫌々行くより、連れ戻すって口実が出来て動きやすくなったわ」
「仕方ないから、迎えに行きましょうか」
祐斗が困ったように、けど少し楽しそうに言った。颯介もくすくす笑っていた。
「やっぱり劇場かな?」
「だろうね…いつ出てったか分からないらしいから、急いで行かないとね」
「むっちゃん着替えてくる?」
むつは寝巻きにしているサルエルパンツとキャミソール。起きてきたから、上着にパーカーを着ていた。
「靴下だけはくよ」
部屋に戻って靴下をはいたむつの手には、布に包まれた細長い物も握られていた。颯介と祐斗はそれを見て、少し心配そうな顔をした。
「見て」
むつは布を取って日本刀をするっと抜いた。そして、パーカーのポケットから人の形に切った紙を出して、ふっと息をかけて床に落とすと、それは芯があるように二本の足ですたっと着地した。




