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7話
「そりゃ…社長の為にとは思いますけど」
「どうなんだろう。自業自得な人が多いと思うし…けど、社長はそうじゃないからね。あんなのでも社長だし」
「嫌な仕事だ…って、誰か携帯鳴ってるよ」
むつがそう言うと、それぞれがポケットから携帯を出して確認したが誰のでもなかった。
「あたしか」
よっこらせ、と立ち上がると部屋から携帯を耳に当てながら戻ってきた。どうやら電話をかけ直しているようだ。
「あ、もしもし?何?…うん?いや、寝てたけど?はぁ……はっ?…うん、いやいいよ。気にしないで、うん…こっちで何とかするから。待ってて…いや、こっちこそ、ごめんね」
冬四郎の身体を押して、無理矢理ソファーに座ったむつは、わざとらしくこほんと咳払いをした。
「社長が脱走したって」




