6話
「単純で、騙されやすいって事か」
西原がぼそっと呟くと、むつが振り向き睨んだ。だが、今は目が見えている喜びの方が大きいのか、すぐにふっと笑った。
「けど、何のために?」
むつは源太の方を向いて首を傾げた。
「取り憑くんのは簡単だけどさ、ただ取り憑くんじゃ悪いから願いを叶えてやるんだよ。それで、それと引き換えに…暗示みたいなのをかけて、身体を心を弱らせて取り憑く。その方が、こっちとしても勝手が良いからな」
「ちょっとした詐欺師みたい」
感心してるのか呆れてるのか、祐斗はオレンジジュースを飲みながら、ふーんと言っていた。
「まぁほら、役者だからな。演技力はあるし、騙すのは得意なのかもしれないな」
源太はあっけらかんとしている。
「それにしても、何でむっちゃんの…その暗示?を解こうと思ったんだ?何の特にもならないのに…それこそ、ただでする事じゃないと思うけど」
「お兄さんは分かってないな。むつは俺を気に入ったって言ってくれたんだ、俺だってむつが気に入ってるから、ちょっかいかけてる。好きな子が困ってるなら、助けるのが二枚目のする事さ」
ふふんっと格好つけて言っているが、白塗りの顔と木と糸の身体のせいか、芝居を見ているような気分の颯介だった。だが、むつは感動しているのか両手を口に当てて、わーと喜んでいた。




