6話
「そうか。あのな、知ってる事は全部話す。けど、ただては嫌だ。俺と契約しろ」
冬四郎の姿をした人形が、むつの方に顔を寄せて真剣な目をして言った。むつは、躊躇うことも考える事もせずに頷いた。
「待て、お前…」
冬四郎が何かを言いかけたが、むつは片手をあげてそれを制した。颯介と祐斗も何も言わなかった。
人形はじっとむつを見た。そして、頷くとむつから取り上げたタバコをぷかぷかと吸った。
「何から、話すかな…そうだな。俺たちは、役者なんだよな生身じゃない、操られてはいるけど演じる者なんだ。だから、長い年月を経て憑喪神…ってやつか?ちょっと違う気がするけど、こうやって意思を持つようになったんだ。操られなくても動くようになった。勿論、意思を持たずに壊れて破棄されていくのもあるけどな」
人形が真面目な顔で話を始めると、むつはソファーから下りて、人形の向かいに座った。
「意思を持って動けるようになるとさ、外に出たくなるんだよ。けど、ほら俺も骨組みしかないだろ?」
シャツのボタンを外して、見せるとそこには肉体はなく空洞だった。
「顔なんて、写真とかあれば頭はあるから何とでも出来るんだけどな。俺は、沼井のおばさんから宮前の写真見して貰ったから、こうやって作りあげたけど」
そう言うと冬四郎の姿をとっていた人形の顔が、とろりと溶けるように、皮が剥けるように床に落ちた。そして、そこにあったのは、白いつるりとした顔が出てきた。




