6話
「うわ…」
祐斗はぎゅっと目を瞑った。紐から人形に火が移ってそのまま、部屋までが火の海になるのを想像していた。だが、いつまでも熱くならないし、焦げた臭いが少ししているだけだった。
恐る恐る目を開けると、人形を縛っていた紐だけが灰も残さずに焼かれていた。火災報知器も反応していない。
焼かれると思っていた人形である冬四郎も、驚いたように瞬きを繰り返していた。
「あ、れ?」
「誰もあなたを焼くなんて言ってないでしょ?どーよ、その気になればこのくらい出来ちゃうんだからね。人を放火魔みたいに扱わないでくれる?」
むつはそう言うと、ライターを冬四郎のポケットに落とし入れた。
「むっちゃん、また暴れられたら困ると思うんだけど…」
颯介はそうは言っても少しだけ楽しそうにしていた。西原と祐斗もそうだった。
「うん、もう暴れないよ。ね?」
「へ?あ…はい」
「次があれば…どうしようかな?手足を切り落としちゃおうかな?」
ふふっと笑いながらむつは言うと、ソファーに座った。そして、ソファーに置いてあったクッションを人形に投げた。
「フローリングじゃ痛いでしょ?使って」
さっきとは、うってかわって 人形に対して優しげな態度を取り始めたむつを見て、冬四郎たちは唖然としていた。




