6話
「不審者よ不審者」
「前に言ってた、俺の偽者?本当に俺だな」
冬四郎は、しゃがみこむと感心したように偽者の自分をまじまじと見ている。
「それと、俺が皆から恨まれてる事に何の関係が?」
「ここで暴れて皆に怪我させた、から?」
「いや、俺じゃないし。だから、殴られるのは無理だよ、無理だからね。西原君、まぁまぁ本気な顔するのやめて」
「っぷはっ…くっ、くっくっくっ」
縛られて、床に転がされていた偽者の冬四郎が笑いを堪え切れなかったように笑いだした。
「あんた、何か情けないな…そう言や、あんたってそこの女の子の事好きって本当か?」
「あぁ、好きだよ。それが?」
冬四郎が当たり前の事のように言うと、むつは少しだけ恥ずかしそうにしていた。
「…成る程ね。そりゃあ、キスして迫ってみてもダメなわけか」
「きすぅ?」
西原が裏返った声で叫んで、何とも言えない顔をして、むつと冬四郎を見比べた。
「むっちゃんが不審者怖がるわけだ。宮前さんの姿でそんな事をされたんじゃねぇ」
「うなされてた嫌な夢も宮前さんだった、ってわけですし」
冬四郎を殴りたいと言っていた3人に冬四郎が加わり、偽者の冬四郎を取り囲むと睨み付けた。
むつは誰のか分からないが、オレンジジュースを飲みながら、4人が落ち着くのをソファーに座って待っている。




