6話
「あっ」
むつが危ないと祐斗に言おうとしたが、偽者の冬四郎が動く方が早かった。伸ばされた手が祐斗の頭を掴もうとしたが、祐斗は屈むようにして避けると逆にその手を掴んで捻りあげるようにして、偽者の冬四郎の後ろに回った。
ぎちっと関節技が入っているにも関わらず、偽者の冬四郎は痛がる素振りも見せずに、祐斗を振り払った。
「わあっつ‼」
壁に背中を打ち反動で頭を打った祐斗は、ずるずると床に座り込んだ。
「祐斗君‼」
祐斗の蹴りつけようと足を振り上げた、偽者の冬四郎の前に西原が出て重心をかけている足の膝裏を肘で打った。バランスを崩した偽者の冬四郎は、尻餅をつくように倒れたがすぐに起きあがった。
西原も立ち上がり、振り上げられた偽者の冬四郎の拳を軽く流すと、顔面を思い切り殴った。
「よぉっしゃーっ‼」
嬉しそうに西原は叫んでいる。だが、体勢を崩さなかったのか、西原の腹の辺りに強烈な蹴りが入った。よろけた西原は、座っていた祐斗につまずいてバランスを崩して転んだ。
「まじでダサい」
むつが呟くと、西原はイラっとしたのか偽者の冬四郎を睨んだ。見慣れた西原の顔ではあったが、近寄りがたいような雰囲気になっていた。




