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6話
むつは、ふんっと鼻を鳴らして笑った。
「お生憎様。自分が欲しい物は自分で手に入れるよ。それに…あんたらに頼まなくても、しろーちゃんはあたしの事好きよ」
ふふんっと勝ち誇ったようにむつが言うと、偽者の冬四郎は顔をしかめた。
側で聞いていた、颯介と西原は笑いを堪えるのに必死な様子だった。
「確かに…宮前さんは、むっちゃんの事が大好きだよね。可愛くて仕方ないみたいだし」
「そういう事。夢にまで出てきて、嫌がらせするの止めてくれる?あと、今すぐ出ていって。そんな姿で居られると…本当に腹が立つ」
むつはぎゅっと拳を握っていた。ずっと手に隠し持っていた札が、くしゃっと瞑れた。
「出ていかないなら、俺が相手しようかな?1回で良いから宮前さん殴りたかったんだよね」
「狡いですよ。俺に譲ってくださいよ」
颯介と西原が暢気にそんな事を言っていると、むつは冬四郎ってそんなに嫌われてるのかと可哀想に思った。
偽者の冬四郎は、颯介と西原を見て少しだけ後退した。そして、ちらっと祐斗を見ると手を伸ばそうとした。




