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6話
西原は方膝をたてて、颯介をかばうように少し前に出ている。そんな2人のただならない様子に祐斗は困惑していた。
「宮前さん鍵持ってますよね?何でわざわざチャイム鳴らしたんですか?むつが寝てるかもしれないのに」
「それに、オートロックはどうやって解除して、ここまで上がってきたんですか?」
西原と颯介がそう問いただすと、冬四郎は黙った。祐斗は、はっとしたように冬四郎から距離を取った。
「出ていく人が居たから、ついでに入ってきたんだよ。鍵は家に忘れちゃって」
そんなに不自然ではない返答だったが、颯介も西原も納得はしなかった。
「それより、むつは?部屋に居ないけど」
「むつなら、居ますよ」
むつは颯介の後ろからそっと顔を出した。冬四郎が帰ってきたにも関わらず、笑みも浮かべないどころか怪しむように、目を細めてじっと睨んでいる。
「ただいま、むつ。寝てたんじゃないのか?」
冬四郎が近寄ろうとすると、颯介と西原が立ち上がって冬四郎がむつに近付くのを阻んだ。2人に邪魔された冬四郎は、苛立ったように眉間にシワを寄せた。




