6話
むつがシャワーを浴びて出てくると、祐斗、西原、晃がのんびりとテレビを見ていた。キッチンでは冬四郎と颯介が片付けをしている。
髪の毛にバスタオルを巻いたままの、むつは晃においで、おいでと手招きされて晃の所に行くと膝の上に座った。
「むつさんて、お兄さんたちと仲良いですよね。そんな風に当たり前の様に膝に座るなんて…あんまりないですよ」
「歳が離れてるから、かな?」
「あーそれはあるかな。俺からしたら娘でもおかしくないからね。谷代君の所はご兄弟は?」
晃はバスタオルを取るとむつの髪の毛を丁寧に拭き始めた。むつはそれが当たり前かのように、されるがままになっていた。
「居ないんですよ。だから、ちょっとむつさんが羨ましいですよ」
「変わってあげようか?」
「座るかい?」
むつと晃が言うと、祐斗はそうじゃないっすよと笑って辞退した。
「むつ、俺はそろそろ帰るよ」
「泊まらないの?」
「あぁ。湯野さんと谷代君が居れば大丈夫だろ?冬四郎と西原君も居るし…俺は劇場に堂々と入れるように話をつけないとな。調べるだろ?」
「嫌な役回りさせちゃうね」
「お前の状況よりましだ…冬四郎に送って貰うから、冬四郎もこっちに戻ってくるの遅くなるかもな」
「大丈夫でしょ。鍵持ってるし…それに明日はあたし病院。祐斗は大学、動くのは夜になってからだと思うし」
片付けを終えた冬四郎がやってきて、髪の毛を拭いている晃を見て溜め息をついた。
「兄さん送ってくるから。むつはちゃんと髪の毛乾かしてから寝ろよ?谷代君、見張っといてくれな…西原君じゃ甘いからダメだ」
「あーそうそう。今日むつと寝るの祐斗君だもんな」
西原がからかうように言うと、冬四郎と晃の細めた目が祐斗に向けられた。祐斗がぶんぶんと首を振って、何かを一生懸命に言い訳していた。
 




