6話
むつがそう言うと、晃は黙った。むつは、はっきりとは言わなかったが、手はない。と言ったも同然だった。
それを聞いていた冬四郎も颯介も祐斗も西原も、何も言えずに黙っていた。むつがそれを承知でそうしたのかと思うと、何も言えなかったのかもしれない。
「…むっちゃん、そろそろ薬飲んで休んだ方が良いんじゃない?」
沈黙に耐えきれなかったのか、颯介はそう言うと薬袋をむつに渡してキッチンに行き水を持ってきた。
「その前にちゃんと食べた方が良くないですか?耳しか食べてないっすよね?せめて、1切れくらいは…はい。あーん」
祐斗は箱に残っていたピザを取ると、むつの口の前に持っていった。むつは、嫌そうな顔をしたが、仕方なく口を開けるともそもそと食べ始めた。
「そんな嫌そうな顔しないで。食べたいって言ったのむつさんじゃないですか。美味しいでしょ?」
「うん…もう1年くらいはいらないけどね」
文句を言いつつも、むつは1切れ食べ終えると颯介から水を受け取り薬を飲んだ。
「さ、お風呂入っておいで。片付けは…宮前さんがしておくから」
「えっ‼何で俺?」
「はーい」
押し付けられる形になった冬四郎は、困った顔をしていたが、むつはさっさと風呂場に向かっていった。




