6話
少し考えるようにしてから、むつは頷いた。
「たまに、ある…やけに生き生きしてるくせに亡くなってる人居るよね」
死んでるのに、生き生きしてるという矛盾した表現ではあったが、祐斗は分かりますと頷いた。他の4人には、まったくもって分からないようで、微妙な顔をしていた。
「つまり?あの劇場に居た人間はむっちゃんと社長だけだったと?」
「ってなると、沼井夫人はすでに人じゃないって事になりますね…そんな事って、有り得ますか?」
晃は自分の言っている事に納得がいかないようで、腕を組んで唸っている。
「………」
考えも手詰まりになり、解決策も思い浮かばずで皆、黙りこんでしまった。
むつは、晃の足の上に顔を乗せて晃を見上げた。晃はそんなむつを、犬をあやすように撫でている。
「ねぇ、警視正殿。捜査の基本って?」
「ん?何だ急に…基本か、証拠集めかな?証拠から導き出される物が犯人に繋がっていくからな」
「証拠か…難しい。あたし自身が証拠よね?身体が不自由になりつつあるから…社長が目覚ましてくれたらなぁ」
「今の場合。夫人はさておき、証拠や確証より解決策だろ?お前がどうやったら、自分の身体を取り戻せるか、だろ?」
「契約は契約じゃない?ピザ頼んで、届いた、お金払いました。当たり前よね?受け取ってお金支払ったのに、やっぱいらなーい、お金返して。はできないでしょ?」




