6話
「それで、名前を調べてこいって言ったのか…そこまで分かっても、肝心の解決策は?何か思い浮かんでるのか?」
ようやく口を開いた晃が言うと、むつはゆるゆると首を横に振った。後ろで結んであるだけの長い髪が、床を擦っている。
「禿に聞いてみよーかな」
呟くようにむつが言うと、全員がむつの方を見た。聞くという事は、また契約を実行させる事にもなるのだろう。
「気になるのは、やっぱ沼井の奥さんよ。なーんで、あの時連れ出す必要がないって言われたんだろ。社長は連れ出せたのに」
こてんっとソファーが頭を乗せて、ソファーに座っている晃を見上げた。
「それに、映像が擬装されてたんだとしても…本当に擬装か?あたしはずっとあそこに居たけど、そんな5分やそこらで、職員を含めて全員を退館させられる?絶対に無理よ。そんな館内放送も何もなかったんだし」
「みんな人間じゃなかったとか?」
むつは声のした方を向いた。視線を向けられた祐斗は、ピザを頬張りながら冗談です、と手を振って慌てていた。
「何でそう思ったの?」
怒られるのかと思った祐斗は、ピザを飲み込んで口元を紙ナプキンで拭った。
「あーだって、幽霊なら出たり消えたり一瞬ですよ?俺、たまに生きてる人と亡くなってる人の区別つかなかったりするんすよね…むつさんは無いですか?」




