1話
「凄いな…一撃必殺だった」
「ですね」
うなだれる西原を哀れみつつ、冬四郎はタバコを取ると火をつけた。晃とむつがそんな関係にならない事を知っているだけに、冬四郎は余計に西原が哀れだと思った。
戻っていったむつは、盆を返し晃と京井の会話の中に入って言ったのか、楽しそうに笑っていた。
「はぁーっ宮前さん、篠田さんっむつの態度酷すぎませんか?」
「そうだね。けど…あの反応を見る限り、一夜限りのって感じには見えなかったね」
「って事は好きなんすかねぇ」
冬四郎は余計な事を言ってしまわないように、黙ってタバコを吸っていた。西原のそういう心配が、あり得ない事だと知っているだけに、フォローは篠田に押し付けていた。
「さぁ?けど…どうだろうね」
篠田は何か思う事があるのか、首を傾げ晃をちらっと見た。冬四郎は、何となく篠田の思ってる事が分かったのか、何も言わずハイボールのおかわりを頼んだ。
酔った西原がうだうだと言うのを篠田が宥めるを繰り返しながら、呑んでいると晃がふいに現れた。
今まで散々、あらぬ事を想像していただけに西原は固まっていた。晃は篠田にだけ、そっと耳打ちをするとむつを促して出ていった。