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6話
そこまで言うと、むつは大きく息を吸った。長く喋るのも一苦労な様だった。
「だから、もし社長がさらに契約をするなら、社長の身体じゃなく、あたしの身体を持っていくよう、あたしが契約を交わしたの。これで、2つね」
「あぁ、それで左目と左耳だろ?けど、病院では肺もって言われただろ?」
昨夜のうちにむつから聞いていた西原が言うと、むつは頷いた。
「つまり、むつと同じ事を…自分の契約を山上さんで支払おうってバカが居るって事か?」
ピザに飽きてきたのか、冬四郎はむつが作り置きして冷蔵庫に入れていた、ししゃもの南蛮漬けに箸を伸ばしながら、呟くように言った。
「たぶんね…あたしは、だって誰かとずっと居たから契約なんか出来ないもん」
「式神を送り込んだ時に、したりしてない?」
颯介が言うと、むつは首を振った。
「契約するなら、その人形と直接話さないといけないから。式神じゃ無理よ」
「1人につき1体が居るって事っすか?」
「そういう事…あたしのは禿。あとの人のは分からないけど…探せば見付けられると思う。それぞれ、手に名前が書かれてるはず」




