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6話
むつの態度にもあまりめげないのか、晃は颯介と祐斗の方を向くと、何事もなかったかのように、深々と頭を下げた。
「いつも、弟と妹がお世話になっております。今回もご迷惑をお掛け致しました様で…西原君も悪いね。仕事もあるっていうのに」
「い、いえ…そんな事は」
「そう言えば、朝方むつからメールがあってね。兄弟だって事を聞いたそうだね?これからも、むつと冬四郎と仲良くしてやってね。と、そんなに固くならずに、今はむつの兄として来ただけだから」
そうは言われても、西原は直立したまま困りきったように、ぺこぺことしている。
「それで、むつの様子は?」
「いちにぃが来るまで元気でしたよ」
嫌味のようにむつが言うと、晃はにっこりと笑みを浮かべるとむつの頭をわしわしと撫でていた。
「そうか、そうか。俺が今日はここに泊まって行くからな、安心しろな」
「…しろーちゃん、藤原呼んできて」
「あ、うん」
むつは、ごろんと寝返りを打つと帰る、と口だけを動かして言った。




