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6話
「むっちゃん…息してるかな?」
苦しそうだよね、と颯介が言うと冬四郎には聞こえたのか冬四郎が晃を引き剥がしていた。
むつはベッドに手をついて、肩で息をしている。かなり苦しかったのだろう。片肺が機能しておらず、ただでさえ酸欠気味なのにあれだけ、きつく抱き締められて余計に苦しかったのだろう。うっすらと額に汗が浮かんでいた。
「むつ、大丈夫か?マスクするか?」
酸素マスクを渡されて、むつはそれを口に当てながら、大きくゆっくりと呼吸をしている。冬四郎は、むつの背中を撫でながら晃を睨み付けていた。
「殺す気ですか?聞いたんでしょ?藤原さんから。酸欠なんですよ、窒息死させるつもりですか?」
「そんなつもりはなかったんだが…大丈夫か?」
むつは、しっしと晃の方に手を振った。まだ呼吸が整わないのか、ぜぇぜぇ言っていて喋るのもつらそうだった。そして、酸素マスクの口に当てたまま、ころんっとベッドに横になると晃に背を向けた。




