6話
「分かんないけど…たぶん、ん?」
むつは何かを言いかけて、廊下の足音に気付いて黙った。足音は急いでいるのか、すぐに近付いてきた。そして、病室のドアの前で止まった。ノックもせずに、ドアが開けられた。
「むつっ‼」
「わ、いちにぃ」
バタバタと駆け寄ってきた晃は、むつの前まで行くと突っ込むような勢いで抱き付いた。うえっと蛙のような声がしたが、それがむつのなのか冬四郎のだったのかは判断がつかなかった。
「むつっ‼どういう事だ‼倒れたって、それに藤原先生から説明を聞いたぞ、俺の顔も見えてないのか?」
いきなり入ってきた大柄の男に驚いているのか、颯介と祐斗はむつを助けには行かない。西原は、立ち上がると直立して、おそるおそるといった様子だった。
大柄な男がむつをぎゅうぎゅうと抱き締めていると、冬四郎がうんざりした様子で少し離れてた。
そんな様子を見ていた颯介と祐斗は、西原の隣に移動すると袖を引っ張った。
「あれって…」
「宮前警視正だ。むつと宮前さんの1番上のお兄さんで…依頼の代理人ってやつだ」
「へぇ…何かちょっとイメージと違う気が」
「俺もそう思ってる」
颯介、祐斗、西原は暑苦しい晃の姿を遠巻きに見ていた。むつから離れた晃は、むつの顔を両手で包み込むように撫で回して、またぎゅうぎゅうと抱き締めていた。




