6話
むつはそう呟くと冬四郎に寄り掛かって、酸素マスクを口に当てていた。
「ねぇ、しろーちゃんお財布持ってる?ジュースおごって」
「ったく…そっか。お前手ぶらか…買ってきてやるからどいてくれ」
仕方なさそうにむつは冬四郎の足の上から下りて、ベッドの上にぺたんと座った。
「何でも良いか?」
「甘いやつ。カフェオレはいや」
「はいはい。みんなは?…適当に買ってくる」
冬四郎が病室から出ていくと、颯介と祐斗がむつの方を向いた。
「社長のあの症状って…」
冬四郎にむつから聞いた事を説明していた颯介は、山上の症状に人形が関わっていると分かったようだった。
「うん。手紙届いてたから」
「むつさん…むつさんもですよね?」
祐斗が聞きにくそうに言った。むつは、少し驚いたような顔をしていた。
「昨日見せてくれた手紙と、願いが叶ったって自分が経験したみたいな言い方してましたよね…?」
「分かってたの?」
「薄々ですけど…」
祐斗は颯介の方を見た。颯介は微かに頷いていた。どうやら、2人だけになった時にその話でもしていたようだった。
「仕方なかったのよ。札はないし社長は見付けられそうにないし…だから、契約した」




