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6話
部屋に残った冬四郎は、椅子を引き寄せて座った。物音に気付いたのか、むつの睫毛が震えてゆっくりと目を開けた。
「むつ、大丈夫か?」
眠そうな目をしたむつは、顎を引くようにして頷いた。
「しろーちゃん…ほんもの…?」
「また偽者出たのか?」
「ゆめで」
吐息のような小さな声は、弱々しい。
冬四郎はベッドの端に座り直して、むつの顔にかかっている長い髪の毛をそっと横に流した。
「嫌な夢だったんだな」
苦笑いする冬四郎に向かって、顎を引くようにして頷くと、ゆっくりと起き上がろうとした。それを冬四郎が、押し止めようとしたが、むつは頸を振った。
「喋るなって言ったのに…藤原のあほ」
寝て少しだけ元気になったのか、むつは呟くと酸素マスクを外した。
「結果は?」
「その前に…説明だろ?どうなってるんだ?」
「先輩かうちの2人から聞いて。説明するのも疲れそうだから」




