6話
部屋に入った冬四郎は、眠っているむつと藤原を交互に見た。藤原は若いしが、しっかりと落ち着いていた。
「むつさんのお兄さん、ですね?谷代さんからお兄さんがいらっしゃるとお伺いしましたが」
冬四郎は頷いた。
「前置きなく、ご説明させて頂きますと…症状としては貧血です。ですが、左目は失明しておりますし、左耳と左肺も機能していません。酸欠でもありますね」
冬四郎は簡潔な説明を聞き、何故むつが酸素マスクをつけられているのかが分かったようだった。
「低体温でもありますし…ほっておくのは危険かと思います。ですが、原因となるものがないので現状維持しか出来ません」
「分かりました。…このまま目を覚まさないという事はありますか?」
「いえ、それはありません。今は普通に眠ってるだけです…身体機能が低下している分、他で補っていて疲れたのでしょう。今夜は一晩こちらにお泊まり頂いて、明日診察してからお帰り頂く事になります。わたしの方からの説明は以上になりますが…何かありますか?」
「いえ…お手数お掛けしますが、よろしくお願いします」
「分かりました。面会はあと1時間程度で秋涼になりますので、お兄さんがお泊まりになられるようでしたら、ナースステーションにお声がけください」
そう言うと、藤原はさっさと出ていった。




