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6話
きゅっと廊下を踏む音が聞こえ、祐斗は顔を上げた。廊下の端の方から背の高い男が近付いてくるのが見える。颯介だった。
「湯野さん」
「祐斗君、1人で大変だったね…お疲れ様。それで、むっちゃんは?」
「点滴打ちながら寝てます」
「そうか…他に異常は?」
祐斗はゆくゆると首を横に振った。
「他の人が来てから話すって言われました…こういう時って本当は家族の人が来て聞くものなんじゃ…」
「宮前さんが来たら、聞くんじゃないかな?俺らが聞いて良いものかは…分からないな」
颯介も椅子に座ると、溜め息をついた。
「やっぱり疲れてたのかな?」
「かもしれないですね」
それっきり2人は黙りこんだ。




