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6話
がしゃんっと何かが割れる音と、どさっと重たい物が落ちるような音がした。映画を観ていた祐斗は、キッチンの方を振り返った。
手伝いに行こうとしていたが、むつが何かを始めた気配もなく、考え事でもしてるのかと、大人しくしていた。だが、物音を聞いてキッチンの方を見るもむつの姿はなかった。
「むつさん?」
祐斗は心配になり、キッチンに向かった。すると、割れて散らばったマグカップのすぐ側にむつが倒れていた。
「むつさんっ‼」
名前を呼びながら抱き起こすと、むつの瞼がぴくっと動いた。ゆっくりとだったが、目を開けたむつだったが焦点があってないようだった。
「大丈夫ですか?」
むつは答えようと口を開いたが、結局何も言わなかった。代わりに、ひゅうひゅうと息の漏れる音した。




