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6話
次にむつが気付いた時には、すでに部屋の中は暗くなっていた。人の話し声も聞こえない。もしかしたら、誰も居ないのかと思ったが、颯介や祐斗が着替えを取りに行くにしても黙っていくはずはないと思った。
むつは布団から出ると、手探りで部屋の電気をつけた。そして、ドアを開けてリビングに出ると冬四郎だけが居た。ソファーに座っているせいか、顔は見えない。
「しろーちゃん?」
冬四郎なら、すぐに顔を上げてくれそうなのにも関わらず、むつが呼んでも冬四郎は返事もしなければ顔を上げる事もない。
むつの心臓が大きくどっくんと鳴った。不安なのか恐怖なのか判断のつかない、何とも言えない不快感だった。
そろそろとソファーに近付くと、むつは冬四郎の顔を覗き込んだ。
「ん、むつか?どうした?」
「声かけたのに…無視?」
「あぁ、そうだったか?気付かなかった」
顔を上げた冬四郎は、にこやかにむつの顔を見ていた。いつもと変わらない様子に、むつはほっとしたように冬四郎の隣に座った。




