6話
西原から手を放した冬四郎は、布団にくるまっているむつを抱き上げると、ベッドに下ろした。
「熱は…ないな?お前は少し大人しく寝てろ。その間に調べてくるから」
冬四郎は自身の額をむつの額に押し付けるようにし、熱がないか確認するとすぐに放れた。
「ん…なら、あれ取って」
むつは棚に置いてあるぬいぐるみを指差した。冬四郎はこの前ようやく渡せた、カクレクマノミのぬいぐるみをむつに渡した。
西原は、むつと冬四郎のやり取りをつまらなさそうに見ている。そして、ぬいぐるみを抱き締めているむつを見て、ふうっと溜め息をついた。
「先輩、先輩」
「ん?」
むつは、枕元から何かを引っ張ると西原にだけ見えるようにした。白い封筒だった。
「これ…」
何故か分からない、という顔でむつは首を振っていた。
「なるべく早く戻ってくるよ。お前、絶対に家から出るなよ。寝とけよ。じゃないと…宮前さんに怒られる」
「先輩が?」
「何で怒られる役が俺なんだよ」
むにっとむつの頬をつまむと、西原は少しだけ笑ってむつの頭を撫でた。そして、その手を後頭部の方から背中に回すとむつをぎゅっと抱き締めた。
冬四郎は、ぎょってしたように2人から視線を外した。
「西原君、そういうのは、2人きりの時にしてくれると有り難いな。仮にもむつの兄としては…」
「俺、宮前さんともハグ出来ますよ?しますか?」
「いらん。行くぞ」
冬四郎は西原を引っ張って部屋を出ていった。むつは、くすくす笑って手を振りながら見送った。




