6話
「謝れるような事をされた覚えはないけど」
「むつから、そういうプライベートな事を聞き出したあげく、一緒に寝たんです」
西原が正直に言うと、冬四郎はすっと目を細めて眉間に深いシワを刻んだ。
「寝た報告までくれるとは…どういうつもりかな?」
「いや、そんな意味じゃ「っ、ふぇっくしっ」
むつはくしゃみをすると、ずるずると鼻をすすった。そして、布団から手を出すとテーブルの方を指差した。ティッシュを取れ、という事らしい。
「布団取られたから、風邪ひいたのかしら?」
冬四郎が不機嫌そうにティッシュを渡した。むつは、ベッドから下りるとティッシュで鼻を押さえた。
「しろーちゃん、しばらくお手伝いに回ってくれるなら…今日泊まる?あの2人は今日も泊まるっぽいよ」
「今日も?昨日は湯野さんと祐斗君も泊まったのか?」
「そうよ。劇場で気絶した社長をここまで運んで、そのまんま泊まって貰って今朝病院に運んできたの」
「西原君。正直なのは良いけど、余計な事まで言わなくていいよ。ただし」
冬四郎は西原の胸ぐらを掴んで引き寄せた。
「泣かせるような事はするなよ」
低い囁き声は西原にしか聞こえなかったようで、むつは冬四郎の手をやんわりと西原から放させようとしていた。




