1話
ピスタチオを噛み砕きながら、冬四郎はむつと晃の様子をそれとなく見ていた。流石に篠田や西原のように好奇心剥き出しに、見る度胸はなかったのだ。
晃がむつの背もたれに手を回すのも、むつが晃の頬に手を添えるのもここから、ばっちり見えた。
「ちょっ、篠田さん…何なんすかあれ」
「むつさんも満更でもないって事か」
冬四郎は2杯目のハイボールをつまらなさそうに、呑んでいる。
「えーっ初対面っすよね?有りっすか?」
「そればっかりは…むつさんの好みとかもあるんだろうけど。手が早いなぁ」
篠田が染々と言うもんだから、冬四郎は堪えきれなくなり笑った。すると、篠田と西原からの避難めいた視線を浴びる事になった。
「な、何ですか?」
「何ですかって宮前さんは心配にならないんですか?あんなに仲良いのに…って、宮前さんとむつってどういう知り合いなんすか?」
火の粉が飛んで来た、と冬四郎は思いハイボールを呑む間に理由を考えた。
「そりゃ山上さん繋がりで」
「あ、そうなんすか?そうなると、山上さんが疫病神っぽく思えますよ」
カシューナッツを口に放り込み、西原はぼりぼりと乱暴に噛み砕いている。酔っているのか、顔が赤い。
「何で?」
「良い男が、むつの周りに集まってる。負けちゃうじゃないっすかーっ」
テーブルに突っ伏して、わぁわぁと泣き真似をする西原に、冬四郎と篠田は呆然としていた。
「酔ってるみたいですね」
「みたいだね。…何呑んでるんだろ」
西原のグラスを持ち上げ、篠田は一口呑んだ。
「アイスティーだ」
「ロングアイランドですか?」
「3杯目だからね」
「そんなに呑んでたんですか?」
篠田が困ったように頷いた。