6話
部屋に入ると、布団にくるまったむつがベッドの上に座っていた。
「ちょっとお願いがある…」
冬四郎と西原はむつと向かい合うようにして、床に座った。くず湯を飲んだにも関わらず、身体が温まりきらなかったのか、むつの唇はまだ紫っぽい。
「管轄内の病院をあたって、沼井と同じ症状の人が居ないか、亡くなってるのがどのくらい居るか調べて欲しいの…」
「かなりの数になるな。症状と名前はいるか?」
「一応、いる。あと、沼井の奥さんと社長の不倫の事だけど…昨日一緒だったのは、やっぱり奥さんだわ。下の名前聞いといて欲しい」
冬四郎は腕を組んで、渋い顔をした。
「名前が分かったら、何か分かるのか?」
「まぁ…それはあとで話すよ。分かるかもしれないし、分からないかもしれないからね」
「分かったよ。調べてくる」
「あ、西原君俺からも言っておかないといけない事がある」
立ち上がりかけた西原を冬四郎が止めると、西原は少し嫌そうな顔をして座り直した。
「この件が片付くまでは、休暇扱いで。よろず屋に協力するように、って」
「え?…あ、そんな事ですか。良かった
」
明らかに安堵したような西原を見て、むつと冬四郎は首を傾げた。
「何を言われると思ったのかな?」
「あ、いやいや…そんな、何でもな」
またすぐに立ち上がろうとした西原の腕を掴んで、冬四郎が引き留めた。冬四郎の顔には笑みが浮かんでいるが、目は笑っていない。
むつは不穏な空気を察知してか、布団を抱き寄せるようにして、ぎゅっと縮こまった。




