257/410
5話
巻き付けた分を口に運び、もそもそと噛んでいるが、あまり美味しそうには見えなかった。
「食欲ないかも」
一口食べただけで、むつはスプーンとフォークを置くと、ドリンクバーで取ってきた葡萄ジュースを飲んだ。
「無理に食べなくていいんじゃない?夜はちゃんと食べようね」
颯介が優しく言うと、むつは素直に頷いた。
「夜って言えば…宮前さん来るんですよね?むつさんの家に?それともオフィスに?」
祐斗が思い出したかのように言うと、むつは何の事かと眉間にシワを寄せていた。
「あ…」
ようやく思い出したは良いものの、こくこくと頷くばかりだった。
「たぶん、オフィスにだと思う…何時に来るんだろ?」
「そこ、ちゃんと連絡取らないとダメじゃないですか?」
「だよね。電話してみる」
携帯、携帯と鞄に手を突っ込み、携帯を取り出した。だが、電話をする事なくテーブルに置いた。
「携帯貸して?充電切れてるわ」
あははーっと笑いながら、むつは西原に手を突き出して見せた。
「ばか、だろ」




