255/410
5話
「病人にする事じゃないと思うよ」
颯介に注意されるとむつは、少しむっとしたような顔をした。
「だって、むかつくし。藤原君が責任もって看ててくれるってさ…だから、任せる事にした」
山上を見下ろすように見ているむつの横顔は、ぞっとする程に無表情だった。怒ってるんだな、と颯介と祐斗、西原は気付いていたが何も言わなかった。
しばらく、むつは山上を見ていた。だが、ふっと肩の力を抜くと顔を上げた。
「ご飯いこっか」
むつがいつも通りの笑みを浮かべると、3人もほっとしたように笑みを浮かべた。
「何にします?」
「蕎麦とかどう?」
祐斗と颯介はにこにこしながら、話ながら病室を出ようとする。むつはまた、山上に視線を戻した。
「むつ?」
「うん、行くよ」
西原に呼ばれたむつは、山上から視線を外してようやく立ち上がった。




