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5話
劇場から山上を運んだ病院までは、車で2時間かかるか、かからないかの距離だったが、結局むつは眠ってしまっていたようだった。
颯介に起こされたむつは、欠伸をしながら車を降りて病院の玄関に向かった。だが、診察時間が終了しているからかドアは鍵が閉まっていた。
むつは緊急搬送用の入り口に向かうと、インターフォンを押した。
『はい?』
「あ、すみません。玉奥と申しますが…」
『あぁ、はいはい。藤原先生のお知り合いの方ですね、そこからお入りください』
かちっと鍵の開く音がした。むつは、ドアを押して開けると颯介と祐斗を先に入れて、ドアを閉めた。
「何か、緊急搬送のドアから入るってちょっと怖いっすね」
祐斗の言う怖いが、何か視えそうで怖いなのだと分かっている、むつは頷いた。
「けど、ここはそんなに多くないよ。ちゃんとしてるし…さっき入った時もそんなに出会してないから」
「やっぱり病院は多いんだ?で、俺らはどこに向かえば良いのかな?」
むつは首を傾げながらも、慣れた様子で歩いていく。颯介と祐斗は、その後に続いた。




