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5話
そして、ぐしゃっと潰される直前でむつは式神を燃やさせた。人形の手が、ぴたっと止まる所までが見えていた。むつの放った式神は、灰になるとさらさらと風もないのに消えた。
「はぁ…帰ろっか」
余程、集中していたのかむつの額にはうっすらと汗が浮かんでいた。むつは指でその汗を拭うと立ち上がった。
「何か、あったんですか?」
「車の中で話すよ…ここじゃ何処で聞かれてるか分かったもんじゃないからね」
むつは忌々しげに言うと、颯介と祐斗と一緒に資料展示室から出た。受付をちらっと見たが、先程の女性は休憩にでも入っているのかいなかった。
劇場から出た3人は、真っ直ぐに車に戻った。颯介が駐車料金の精算を行い、領収書をむつに渡した。
「ガソリン代も請求してよ?あたしが払うわけじゃないけどさ」
鞄に領収書をしまったむつは、そう言って車に乗り込んだ。




