5話
むつは自動ドアが開くと慣れた様子で、すたすたと入っていく。颯介と祐斗は、初めてという事もありむつの後にくっつくように入って行った。
「あら、お嬢ちゃん」
受付にいた女性がむつを見付けて、嬉しそうに手を振っていた。むつも手を振って、ぱたぱたと受付に行った。その様子を見ていた、颯介と祐斗は呆気に取られていた。
「お嬢ちゃん?」
「本当に歓迎される感じですね」
むつは、にこやかに受付の女性と話をしている。そして、颯介と祐斗の方を振り返り手招きをした。振り返った時には、その顔に笑みはなかった。
「一瞬で表情変わるの本当怖いっすね」
「だね。呼ばれてるから行こうか」
颯介と祐斗もむつに習って、にこやかな表情で受付の前まで行った。
「まぁ、大学のゼミでも伝統芸能について調べてたりしてたのね。それで少し知ってたのね。そちらは同級生?」
「いえ、いえ講師の先生と後輩ですよ」
女性は興味深そうに、颯介と祐斗を見た。むつの説明を鵜呑みにしたのだとしたら、颯介が講師で祐斗が後輩という事だろう。
「あら、良いだろ?男揃いの大学なのね。羨ましいわぁ…それで、今日は先生と後輩君を連れて?」
「今日は鑑賞教室ないですよね?けど、また中の資料展示見たいなってなって…それだけでも入れますか?」
女性はむつの顔をまじまじと見ていた。何か疑われているのかと、むつは微かに緊張した。




