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5話
むつに言われて、颯介は劇場から少し離れた所にある駐車場に車を停めた。休日だからか、コインパーキングも満車の所が多かった。
「むつさんも中入るんですか?」
「まぁ、だって…入らないと分からなくない?」
「何事もなかったように、営業してるかどうかの確認なら俺らだけで行くよ?むっちゃん…3日連続で来てる事になっちゃうけど」
「大丈夫、大丈夫。浄瑠璃にハマった若い子的な感じで行けば、何なら歓迎されるわよ」
「若い子?」
祐斗が、そこに疑問を持つとむつは、祐斗の耳をひねりあげた。
「若くないって言いたいのかしら?」
「いや、そんな事ないっす…むつさんは若いっす。十分、若いっす」
「でしょ?…行くわよ」
祐斗の耳からぱっと手を放したむつは、満足そうに頷くと先に歩いて行ってしまった。その後ろ姿を颯介と祐斗は見ながら、ほっとしたように笑った。
「ちょっと元気出たみたいっすね」
「良かったのかな?耳は痛そうだけど」
「案外、そうでもなかったですよ」




