236/410
5話
山上を助手席に押し込み、むつは西原と祐斗に挟まれるようにして真ん中に座っていた。
むつの案内に従って颯介は運転し、病院の駐車場に車を停めた。山上を下ろそうとしている間に、むつは救急搬送用の入り口から入っていき、看護師と共にストレッチャーを運んできた。
「乗せて」
後から出てきた、ポロシャツに白衣を着た若い男がむつと何かを話している。
「じゃ、後はお願いね。西原先輩が付き添いで居てくれるから。先輩、これ大学の後輩で藤原君」
西原と藤原と呼ばれた若い医師は、会釈をして簡単に挨拶をしていた。
「何かあればすぐに、連絡を」
「はいはい。むつさんは…寄っていかなくて良いですか?」
「…後で来るよ」
「分かりましたよ。じゃ、運んで。西原さんもどうぞ、こちらに」
藤原は看護師に指示すると、ストレッチャーに乗せられた山上と西原と一緒に病院の中に入って行った。
むつはそれを見送ると、助手席に乗り込むと颯介に、行こうかとだけ言った。




