5話
結局、ベルトも見付からずむつは少しウェスト部分の緩いスキニーパンツを気にして、丈の長い身体にフィットする黒いインナーを着て出てきた。
「紫やめたのか?」
「上に着ようかと思ったけど、何か変かなと思って。それに、こっちのが動きやすい」
「運動部みたいっすよね」
むつは長い髪を縛って、くるくるとまとめて、お団子にしてコームを刺した。
「ふん、あたし部活はずーっと文化部だったんだけどねぇ。美術部とかさ」
いつも使っているショルダーバッグの中身を確認して、片手で抱えるように持ったむつは、真顔でそう言ったが祐斗には信じられなかった。
「むっちゃん、札は?」
「一応、入れた」
「なら、行こうか。山上さん運ぶよ」
「あ、俺も手伝います」
立ち上がった西原と祐斗は部屋に入って布団をどけると、まだ目を覚まさない山上の腕を掴んで肩に回した。
山上の上体を起こした西原は、山上の頭の下にあったのであろう、白い封筒を取って祐斗に見られないようにポケットにしまった。
そして、玄関を出るときに西原は、むつにそっと封筒を渡した。受け取ったむつは、少し悔しそうに唇を噛むとポケットに突っ込んだ。




