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5話
颯介が起きた時にしたように、むつは山上の口元に手をかざして、呼吸の確認をし、続けて首筋に指をあてると脈をとった。
昨夜と同じように、呼吸も脈も弱々しい気がした。顔に触れてみると、ひんやりとしていて、生きている人のようにはとても思えなかった。
むつは、布団を顎の下まで引っ張りぽんぽんと叩いた。それでも、山上はぴくりとも動かなかった。
「むつ?」
「ん?…何?」
部屋に入ってきた西原は、床に膝をつくと山上の額に手をあてた。
「こんなに体温低くなってたのか」
「早くしないと。本当に危ないね」
「そうだな。けど、山上さんが死と引き換えにしてでも叶えたい事って何だろうな」
「さぁ?それは本人に聞くしかないね」
「むつ、湯野さんと祐斗君が一緒に居るからって無茶はするなよ?様子見に行くだけにしておけよ、良いな?」
「うん。ま、今日の事は朝御飯食べながら話すよ…今、お兄様とも少し話したし」
「お兄様ってのは…」
「長男よ。1番使えそうだもんね」
にやっと笑うとむつは、部屋を出ていった。残った西原は、山上を見つめて溜め息をついた。
「恐ろしい部下をお持ちなようで…」




