231/410
5話
顔を洗って戻ってきた祐斗に、むつはあれこれ指示を出して朝食の支度をさせた。買い置きの食パンを使って、サンドイッチを作り、トマトベースのスープとサラダを作るだけの簡単な物ではあった。だが、あまり家で料理をしないのか祐斗の危なっかしさを気にして、包丁を握ったのは颯介だった。
「颯介さん、上手いね」
キャベツがあっという間に、ふわっとした千切りになっていくのを見てむつは感心していた。
「1人暮らし長いからね」
むつは颯介と祐斗に任せると、携帯を持って部屋に入っていった。ぼそぼそと話し声が聞こえた。誰かに電話をしている様子だったが、何を話してるのかは分からなかった。
通話を終えたのか、部屋から出てきたむつは、携帯をテーブルに置くと山上の様子を見に行った。
昨日と何ら変わりない。寝返りを打つこともなかったのか、布団が乱れた感じもない。




