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5話
顔を洗って戻ってきたむつは、颯介からマグカップを受け取るとふぅふぅしながら口をつけた。昨日みたく、距離感を誤る事はなかった。
キッチンでシンクに寄り掛かるようにして、むつと颯介は並んで立っていた。2人が、マグカップ片手に眺めているのは、祐斗と西原だった。
祐斗が西原に説教をしている。
「あの2人、仲良いよね」
「そうだね。祐斗君が年上に向かって、あんな風に言うのは西原さんくらいなんじゃないかな?」
「祐斗に説教食らうようじゃ…まだまだ、だね。あたしでも、ないっていうのに」
颯介は、むつをちらっと見ると困ったように少しだけ笑った。
「所で…こんな時間だけど。どうする?」
「会社?そうね…皆ここに居るし、出張中って事で良いんじゃない?手当てくらい出しましょ」
「そうだね。うん、それも気になってたけど…今日はどうするの?」
「お兄様を使ってちょっと…ね。あとは、劇場の様子を見に行って。社長…病院に連れていこうかな?」
「分かった。なら…俺も一緒に行くよ」
「そうして貰えると助かるね。とりあえず…遅いけど朝御飯にでもしようか?」
 




