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5話
ぼそぼそと聞こえてくる話し声で、すっすらと目を開けたむつは、もぞもぞと身動ぎをした。
寝息が頬にかかる程に近くに居る西原の顔を、ぼんやりと眺めていたむつは枕元の携帯を取ろうとした。だが、西原の腕がするっと背中に回されて、引き寄せられた。
「もぅちょい…」
むつは温かい西原の腕の中で、再び目を閉じようとしたが、はっと顔を上げた。
「やばっ…先輩、しごとっ…っわぁ‼」
「ばかやろっ‼」
寝坊した、と勢いよく起き上がり西原をまたいでベッドから降りようとしたむつは、布団に滑って顔から床に落ちた。
「顔、セーフ」
うつ伏せに落ちたむつの顔を庇うように、西原の腕が回されていた。そして、慌てた西原もベッドから落ちる形でむつの身体を挟むようにして床に膝をついた。




