5話
西原の苦悩を聞き、むつは少しだけ笑うと体育座りに戻して膝をぎゅっと引き寄せて顎を乗せた。
「そうね…けど、兄たちは何も想ってないみたいよ?あんま…分からないけど」
「ふーん?俺もちっとは認められてるって事か」
ふふんっと西原が得意気に笑うと、むつは呆れたように少しだけ笑った。
「俺、むつは宮前さんの事が好きなんだと思ってたけど…違うか?」
「…もう質問ないんじゃなかったの?」
むつは困ったように笑うと、溜め息をついて、西原から視線を反らした。そして結局、西原の質問には答えなかった。
「あのさ…今のは悪かった。けど、あー何つーか、あのさ」
西原はむつの方に身体を向けると、膝を抱えているむつの手に自身の手を重ねて置いた。
「嫌ならはっきり、言って欲しいけど…その、あぁ…はっきりしないのは俺の方だよな。だからフラれたんだよな」
むつは、少し顔を上げて西原を見た。
「やっぱ俺、お前と寝たい」
「は?何言ってんの?嫌、無理」
困ったような顔から一転して、眉間にくっきりとシワを刻んだむつは目を細めて西原の手を振り払った。
「変な意味じゃないって‼言葉が足りなかった…そうじゃなくて。何かしたいんじゃなくて、いや…それも嘘じゃないってのもちょっとはあるけど。今は、そうじゃなくてむつの側に居たいんだ。絶対に変な事しないから」




