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5話
「何か考えはあるのか?」
「んー?篠田さんという権力を駆使?…正直、今は全然何も思い付いてないかな。明日、劇場の様子は見に行く。変わりないか…ね」
むつはタバコを持とうとして、取り落とした。まだ、全然距離感が掴めていないらしい。
「あっぶな…で、とりあえず納得?」
床に落ちたタバコを拾って、むつはぱんぱんと敷いてあるラグを叩いた。燃え移る事はなかったようだ。
「あと、1つ」
西原は聞きにくいのか、氷の溶けてきているハイボールを呑むと少しだけ姿勢を伸ばした。
「宮前さんとの関係は?」
「知り合い、で納得しないよねー?」
へらっと笑いながら、ぷかぷかとタバコを吹かしていたむつは、ふっと真顔になった。
「何で納得しないの?」
「いくら親しい人でも、鍵をかけてるはずの部屋に居たら怖くないか?来てたっての聞いた時に、何か引っ掛かったんだよな。言い方にかな?だから、何か特別な関係かと思ってな」




